こっちで良いのでは?「RX580」の登場でVRレディ最安値になった「RX480」のVR性能と実力

AMDの最新GPUである「Radeon RX500」シリーズの発売によって、価格が大きく下落している「Radeon RX480」。あえて今、Steam VRにおける「VRレディ」GPUの中では最安値となったRX480のVR性能とその実力をレビューする。AMDが「VRモデル」と公称する本GPUの性能は本物だったのだろうか。

型落ちモデルとなり市場価格が下落しているRX 480

1億人のユーザーにVRを届ける先鋒となったGPU「RX480」

AMD Radeon RX480は昨年に発売されたPolarisアーキテクチャのAMD社によるGPUだ。「数年以内に1億人のユーザーへVRを届ける」というスローガンどおり。発表時点で4GBモデルは199ドルという価格が設定され、NVIDIAのGTX1000シリーズの対向製品として話題を集めた。

ほぼリネーム品のRX580の登場で大きく価格が下落

残念ながら日本国内ではRX480-8GBのOCモデルは4万円近い価格という事もあり、Geforce GTX1000シリーズの影に隠れる形になっていたが、1年の時間をかけて徐々に代理店税の影響も少なくなり、直近ではRX480の8GB版も2万円台まで下落していた。


そして、4月18日に最新GPUになる「Radeon RX 580」が発売され、RX480は旧製品になった事から急激に価格を下げ、ネット通販や電気街では2万円を切る1万円台という処分価格も現れ始めた。

筆者自身は自分の作ったVRコンテンツの最低動作GPUを確認するための予備PCのグラフィックボードを物色していたところ、RX 480が投げ売り状態になっていたため購入。「VRレディ」を謳うグラフィックボードの実力はどの程度なのだろうか。

RX580と比べて価格差は大きいが、性能差は小さい

現在、「Radeon RX 580」の8GBは3万円後半とミドルローに位置するGPUの割には高価だ。RX480と大きな価格差になっているが性能面で大差ない。主な変更点はGPUのコアクロックが多少向上し、消費電力が増加している程度に収まっている。

さながらRX480のオーバークロックモデルといった所だろう。

HIS RX480 8GBの外観と特徴

今回購入したビデオカードはHISの「RX 480 IceQ X² OC 8GB」となっている。「HIS」はNVIDIAシリーズを購入し続けているユーザーには聞き慣れないメーカーかもしれないが、Radeonシリーズでは有名な定番メーカーだ。

カード長は23.5cmとなっており、Metis程度のコンパクトケースであれば、工夫次第で十分収納が可能なサイズとなっている。

HIS AMD RADEON RX480搭載ビデオカード(amazon)

OCモデルであり、補助電源もリファレンスモデルの6ピンから8ピンに強化されている。6ピン2本から8ピン1本に変換するためのケーブルも付属。その他はドライバ・マニュアルとシンプルな付属内容だ。

RX480とRX580の性能差

RX480の性能は各所で語られ尽くされているが、Steam VR上での実際のVRパフォーマンスを見る前に軽く触れておく。

DirectX12,DirectX11の非VRゲームの性能

・3DMark Timespy 、 Firestrike(FullHD)

ベンチマークを見ても、RX480とRX580に大きな差はない。RX580はクロック向上によるトレードオフとして消費電力が大きく向上しており、実質リネーム品のOCモデルといって良い最新GPUに収まっている。DirectX 12に強いAMDらしく「Time Spy」ではGTX1060と比較しても遜色はない。

・FF14蒼天のイシュガルドベンチ(Full HD 最高画質 DirectX11)

NVIDIA GAMEWORKSという事で、AMDの「RADEON」には不利なベンチマークだが、価格を踏まえると十分なパフォーマンスを出している。FF14のような設計が古めのゲームでも高画質・高フレームで遊ぶ際に支障はなさそうだ。

VR系ベンチマークスコア

・VRMark Orangeroom、Blue Room

現在のVRソフトを基準としたOrangeRoomではGTX1060シリーズとも互角の勝負を演じているRX480。ここでもクロック分がRX580との差となっている。次世代のVR性能指標となるBlueRoomでも傾向は変わらない。

・Steam VRパフォーマンステスト

VRレディ判定となる「6.9」というスコアになっているRX480。RX580はOCモデルで「7.1」判定となっている。本テストはGeforceに若干有利に働く傾向でGTX1060シリーズに大してRX480,580ともに若干の差が付けられている。

   

RX480のVR性能 その実力は?


VRレディ最安値のRX480。実際にはどの程度快適にVRタイトルが遊べるのだろうか。VRゲームを数点チョイスして、そのGPU性能を見ていく。なお計測にはSteam VRのフレーム計測機能を用いる。

SteamVRでは快適なプレイには90フレーム維持が必要で、これを実現するにはCPU、CPUともに「コンポジター」を含めて11ms以内で処理を完了する必要がある。

The lab

Steam VRを代表するValve社によるVR入門無料ゲーム集。全編で徹底した最適化がされており、高い品質ながらも安定したゲームプレイが出来る。GPUの負荷を図る際の目安に丁度良いタイトル。ここではR9 Nanoと比較しながらRX480のVR性能を見ていく。


・ステージセレクト部屋


RX480は概ね7~9msといった所で推移しており、余裕はある。R9 nanoとの差は1ms~2msとなっている。RX480は十分余裕を持って、90フレームで安定して維持できている。

R9 nano

RX480


・シークレットルーム


RX480は8~10msで推移している。負荷の高い場所では余裕が少なくなっているが、ヘッドセットを左右に素早く移動させても11msを超えることはなかった。

R9 nano

RX480


・Sringshot


The Labの中でも最も負荷の高い本コンテンツでも完全に11msを維持している。他のThe labのコンテンツでも安定したフレームレートが維持できていた。Steam VRの定番・基準となる「The Lab」においてRX480は完全に対応していると言って良いだろう。

R9 nano

RX480

The Blu

ここからはRX480単体で見ていく。グラフィッククオリティも高い「The Blu」ではピンクのクラゲと深海のクラゲが大量に発生するシーンでは11msを超えてフレームがドロップしている。11msを超えるが瞬間的であり、SteamVRが備えている補完機能と相まってコンテンツを楽しむ阻害にはなっていない。

上記のシーン以外では安定して90フレームを維持できている。

GunJack

元がスマホVRでPCへの移植タイトルということで負荷は非常に低い模様。常に5ms以内で処理が完了しており、エフェクトが多く重なっても全く問題なく常に90フレーム安定している。RX480のGPU能力では余裕といったところだ。

SoundBox

プレイ中は全体で4ms前後と非常に安定している。セレクト画面ではやや負荷が上がるが、ゲーム本編ではエフェクトが多数重なるようなシーンでも堅牢に動作している。運動量が多いゲームだけに全編90フレーム安定はVR酔い回避に大きな効果がある。

Sairento

頻繁に11msを超えており。敵が多量に登場し、ステージ全体を見渡すシチュエーションに入ると45フレームモードに移行している。早期アクセスタイトルであり、最適化不足な点もあるが、本タイトルをそのままプレイするにはRX480では厳しい印象。

Vanishong Realm

基本的に全編で11msに収まっているが、ダンジョンエリアを抜けた中盤移行の視界が開ける屋外のシーンのワープ移動時に瞬間的にスパイクが発生する。とは言えワープ移動時の負荷なのでプレイ中は気づく訳もなく、ゲーム自体は全く問題なくプレイできる。

ワープによってロケーションが瞬時に変化する事から、カリングや各種処理も一斉に走るため、CPUの負荷も怪しいが、ハイエンドのGPUではスパイク込みで11msに収まっているので、原因はGPUの様だ。

開発側も認識しているが、ワープ移動時のみで事実上プレイに害はないので許容しているといったところだろうか。

Project Cars

全編で11msを維持できてないため、45フレームで動作している。ここまで来ると逆に45フレーム固定で安定しているため不快感は少ない。プロジェクトカーズはGTX1080でも90フレームを維持できないタイトルなので、割り切って45フレームモードでプレイした方が可変フレームレートよりVR酔いが軽減されそうだ。

自作VRソフト

折角なのでUnityの練習で作った自作VRソフトでも試してみる。一応VRレディ基準を想定して制作していたが、GTX970やRX480といったジャストVRレディのGPUでは試していなかった2タイトルだ。

TokyoSkyWalker

初めて触るUnityで大規模な都市を上空から遊覧するVRコンテンツという事で、元からパフォーマンスには警戒していたVRソフト。元データからゲーム構造まで最適化を施しているため、GPU処理には十分な余裕はある。・・・というかバッファを取りすぎている様だ。

四の連鎖

負荷テストとして制作した練習VRソフト。両手のリアルタイムのライトとシャドウが全編に影響するためGPU負荷は高い。そのためか一定の場所で11msを超えてフレームがドロップしている。

当初は実は各所の点在している幽霊女の負荷でドロップしていると思われたが、詳細にプロファイリングしてみると、遠くの木の葉がボトルネックと判明した。葉を微調整したところ11ms以内で安定する事を確認したので、最適化不足といった所だ。

昨年に古いバージョンのSteam VRプラグインを用いて制作したためかコンポジターの負荷が高い。新たに制作する場合はPlug inのバージョンを更新しておいた方が良さそうだ。

最適化が不十分なVRゲーム以外は快適にプレイできる

RX480は有名なVRゲームタイトルでは十分快適にプレイできる実力を見せてくれた。一部のVR対応ゲームではGPUの処理時間が11msを超えて、秒間90フレームを維持できないケースもあったが、それらのタイトルが「The Lab」や「バットマン:アーカムVR」と比較してリッチなグラフィック・VR体験が可能になっているわけではなく、単純に最適化不足という側面の方が大きい。

現時点ではVRはGPUの余裕がなく、力技ではパフォーマンスを維持できないため、各デベロッパーの技術力が顕著に出ている。RX480は最適化が不十分なVRゲーム以外は快適にプレイできるGPUと見て良いだろう。

通常ゲームもPS4より高画質で高いフレームレートで遊べる

RX480はVRレディを実現する高いGPU処理能力があり、非VRの最新PCゲームも十分快適に遊ぶ事が出来る。フルHDであれば高画質設定、60フレームで安定が期待できる。ダークソウル3などでは高画質設定で十分60フレーム維持が可能だった。非VR用のゲームGPUとして見てもコストパフォーマンスは極めて高い。

VRAMも8GBを備えたモデルが多く、GTX10603GB版のようにVRAM不足でフレームレートが極端に下がる事もなく、比較的長い間、実用レベルでゲームがプレイできる点も嬉しい。

今現在のVRゲームを遊べるVRレディ最安値のGPU

RX480は価格と性能のバランスが良い。将来に渡ってSteam VRのタイトル郡を遊ぶためのGPUというより「今現在のVRゲームが遊べるお手頃なGPU」といった位置付けと言える。

GPUの進化の速度は早く、ハイエンドの陳腐化も早い。筆者が100,000円近い価格で購入した「R9 Nano」と20,000円で購入した「Radeon RX480」にVR体験では大きな差はなかった。

RX480の値下がりに併せてGTX1060も価格が下落しており、SteamVRのタイトルが未だ揃っていない現在は、安価なVRレディGPUでVRを堪能するのは悪くないと思える。

大作ソフトやPSVRからの移植タイトルが揃ってきた頃には、「GTX1080TI」や「Titan XP」に匹敵・又は上回る「GTX2080」 や「Radeon RX VEGA」などの次世代GPUも揃ってくるだろう。

HIS AMD RADEON RX480搭載ビデオカード オーバークロックモデル(amazon)

   

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