ローエンドでもVRしたい NVIDIA編「Geforce GT 1030」ベンチマーク、VRゲーム性能レビュー

VRゲームは高いGPU性能を求められ、快適にプレイするには高価なグラフィックボードが必要となる。しかしPSVRは決して高いといえないGPU性能でVRを実現している。PCのGPUの進化は早い。最新のローエンドグラフィックボードであるNVIDIAの「Geforce GT1030」ではVRは無理なのだろうか。

今回はGT1030で無謀にもhtc VIVEで動作させ・VR体験しながらレビューしていく。

Pascalアーキテクチャで最も新しく、最下位のGT1030

「Geforce GT 1030」は「Geforce GTX 1080」登場から1年後リリースされた、最新Pacalアーキテクチャのローエンドグラボだ。AMDの「RX550」に対向する製品として2017年5月にリリースされた最も新しく、最も下位に位置するGPUとなっている。(プロ用のQuadro P400を除けば)

スペックは上記のとおり。名称は「GTX」ではなく「GT」という点からも本格的なゲーミングを想定したラインナップではないというNVIDIAの意思表示が伝わってくる。勿論VRの動作は謳っていない。

シェーダー数は384ユニットとGT730から据え置きとなっているが、Keplar世代からMaxwellを飛ばしてPascalアーキテクチャとなるGT108の製造プロセスは28nmから16nm FinFETと大きく進化している。GT1030は2世代分の進化となっており、GT730からの大きな性能の向上が期待出来る。

テストで利用するのはロープロファイル1スロットの「MSI GT 1030 2G LP OC」

今回テストするグラフィックボードはMSIの「GT 1030 2G LP OC」。モデル名どおりコアクロックがベースで1227→1265Mhz、ターボは1468→1518Mhzと少しだけオーバークロックされている。

ローエンドならではのコンパクトな外観

 ロープロファイルかつ1スロットというTDP30Wを活かした小型グラフィックボード。重量も132gしかない。昨今のハイエンドグラボは1000gを軽く超えている事を踏まえると非常に軽量でコンパクトだ。

専有スロットも1つで収まるため、メーカー製PCなどでも十分収まる。奥行きも16cmとPCI Expressの限界サイズまで小さい。接続速度は×4だ。勿論ロープロファイルプラケットも付属しており、スリムケースにも対応出来る。

最先端の映像出力ポートに対応

ローエンドながらもディスプレイポート1.4とHDMI2.0bという最新の映像端子の構成になっている。あえてDVI端子を省いており、最新のディスプレイとVR(メーカーとユーザーも想定していないが)にも対応し易い。

ベンチマーク、通常ゲーム性能、消費電力

VRの動作を見る前に、まずは通常のベンチマーク等でGPUパフォーマンスを見てみよう。ライバルであるRX550に加えて、前機種にあたるGT730、内蔵GPUはもちろん、上位GPUとの性能差も見ていく。

最新のアーキテクチャによる進化はローエンドGPUにどの程度のパフォーマンスを与えてくれるのだろうか

3DMARK TimeSpy & FireStrike Full HD

DirectX12の次世代ゲーム指標となる「TimeSpy」とDirectX11の現行ゲーム指標となる「FireStrike」のスコアが以下。GT 730からの性能の向上は大きいがGTX 750TIには少し届いていない。

RX550にはDirectX11では互角、DirectX12ではやや劣るといった所だ。GTX 1050、GTX1050TI、RX460、RX560との差は大きい。 

FF14蒼天&紅蓮ベンチ

PS3世代の少し古いゲーム世代の性能指標となるFFベンチ。Gefroceが有利に働くベンチでGT  1030はAMDのRX550より少しだけ高いスコアだ。GT730からは倍以上の進化が見られるが、こちらでもGTX750TIに少し届いていない。

VRレディを謳うGTX480、GTX1060との格差は3倍近い。とはいえ、フルHD最高画質でも快適判定を得ており、グラフィックオプションを調整すれば十分FF14は遊べそうだ。

実際のゲーミング性能

ゲーム内の実動作ではビデオメモリ2GBという事もあり、最大搭載容量4GBのRX550に少し遅れを取っている形だ。各ゲームは画質設定次第で秒間30フレームレートを維持することも不可能ではなく、予想以上に動作するといった印象。今世代のゲームは全く動作不能だったGT730と比較すると次元の違うGPU性能を見せてくれている。

昨今のゲームはコンシュマーに合わせてVRAMの使用量が増大している。2GBのGT1030は4GBのRX550と比較するとGPU性能以上に差が出ている。少し搭載ビデオメモリ量のボトルネックが発生してる模様。

VRゲームはビデオメモリの消費は少なそうだが、3GBのVRレディGTX1060も存在する。この辺のVRパフォーマンスの影響は気になる所だ。

消費電力比較

筆者の手元のシステムで条件を同じにして測定したシステム全体の消費電力結果が以下。

GT1030は内蔵GPU「グラフィックボードなし」のIntel HD 530から微増程度に留まっており、高い省電力性を示している。TDP25WのGT730と比較しても遜色はない。

VR系ベンチマーク

では本題のVRの動作テストに入っていく。実際にhtc VIVEで動作させる前にVRの動作を図るベンチマーク結果を見ていく。GTX1060、RX480でVRレディとされているが、GT1030だとどの程度のスコアが出るのだろうか。

SteamVR Performance Test

SteamVRの基準となるベンチマーク。CPUの判定は行っておらず純粋なGPUベンチマークとなっている。GT1030の結果はVRが全くプレイできない「平均忠実度 0」と先行きが不安になる判定となっている。全フレームがVRでは必須の90FPS以下という結果は圧巻だ。

「Steam VR Perfomace Test」はスコアが「6」以上で「VRレディ」判定となるが、VRレディ以下のGPUに関してはスコア判定が急に厳しくなる。GPUメーカーがVRレディを謳っているGTX1060と非対応なGTX1050TIのスコア差は実際のGPU性能より遥かに大きい。

通常のゲームと違い、VRにおいてフレームレートの低下の影響は体験の快適度を大きく左右する。VR酔いによる健康被害も発生する事を踏まえると、この判定は妥当なのかもしれない。

VRMark Orange Room

ハイエンドGPUではベンチマークの負荷が軽すぎて差が出なくなるVRMarkのオレンジルーム。こちらではある程度GPUの性能部分布に近い傾向を示す様だ。

GT1030はライバルのRX550に大きく差を付けられている。平均FPSは「41」となっており、必要条件の「90」には全く届いていない。

実際のSteam VRゲームをGT1030で体験テスト

ベンチマークではVRは全く動きそうにない結果を示したGT1030。実際にhtc VIVEを用いてVRを動作させる事は厳しいのだろうか。VR酔い覚悟でテストしてみた。

尚、重度のVR酔いが発生すると個人差もあるが、頭痛と吐き気で数時間ダウンしてしまう場合がある。GPU性能が怪しい環境で試す際は寝る直前がオススメだ。

90フレーム維持が求められるSteam VR

VRでは秒間90フレームの維持、CPU・GPUともに11ms以内の処理が完了する事が求められる。Steam VRには処理が追いつかない場合に緊急対応的は補完機能があるが、補完機能が発動する割合でVR体験の快適度は低下していく。

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再投影オプション設定

テストでは再投影のオプション設定は両方「オン」としている。これは90フレーム維持できず、可変50~70フレーム前後で推移し、非同期再投影も追いつかない様な場合、まともにVR体験が継続出来ない状態に陥るためだ。

しかし「インターリ-ブ再投影」の固定45フレームモードなら一定のVR体験を維持しながら継続できる。この様な理由で一般的なゲームのパフォーマンス測定とは違う方法をあえて採用している。

疑似90フレームの非同期再投影に関してはオフの方がGPU負荷は低くなるが、その場合90フレームを完全に捨てる事になるのでオンとしている。また再投影オプションに関しては以降は以下のように表現している。(用語だと分かりにくいので)


インターリーブ再投影の状態 → 45フレームモード

非同期再投影が頻繁に発動している状態 → 疑似90フレーム


VR快適度の判定基準

ロークラスのGPUではVRに必要な90フレーム維持 11ms以内の処理完了は厳しい。そこで以下の様なVR快適度の基準を授けて判定していく。

基本的に快適なVR環境を構築するためには上記の表で100%が必要になる。この判定基準はあくまでGPUの性能がVRレディ未満のテストにおける特殊なケースだ。

Supersampling「1.0」は厳しいので「0.8」基準でテスト

GT1030でSteam VRが起動するか不安であったが、結論から述べるとテストしたVRゲーム全て起動可能であった。ただし、デフォルト設定の「Supersampling」値「1.0」ではパフォーマンスが厳しいゲームが多かったため、最低値の「0.8」を基準として「1.0」と併せてテストしている。

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以下は「1.0」の「The Lab」におけるGPUの状態。疑似90フレームは勿論、45フレーム固定モードでも未だ追いついてない。最適化が進んだThe Labでこの状態では、他のVRソフトも厳しい。

以下は「0.8」の「SoundBox」におけるGPUの状態。エフェクトが重なると瞬間的に11msを超えてドロップしているが、疑似90フレーム補完で耐えている。GT1030でのVR動作に希望が見えた瞬間だ。

Steam VR 基準ゲームソフト

まずはSteam VRの基準となる定番コンテンツ「The Lab」から見ていこう。比較対象としてVR Redyの「Radeon RX 480」を挙げている。各コンテンツの平均フレームレートは以下のとおり。

VRレディのRX480は流石の90フレーム完全安定だ。VR快適度は100%と言えるだろう。

*SSは「Supersampling」の略

The Lab(コンテンツ選択部屋)VR快適度 0%

The LabのハブとなるVIVEユーザーにはお馴染みの部屋。角度と方向によっては45フレーム固定で維持出来ていたが、首を降ると30フレームまで落ち込み目眩やフラつきが発生する。特定の何かが重い様だ。ゆっくり慎重に動けば何とかなるが、快適度は0%だ。

LONGBOW VR快適度 30%

基本的には45フレーム固定を維持しており、プレイ中は違和感はない。エフェクトが重なると瞬間的に45フレーム以下になるが、時間が短いのでVR酔いには繋がらなかった。快適とは言い難いが普通にプレイを継続し、WAVEを攻略し続けれる。更にSS値が「1.0」でも普通に遊べた事も付け加えておこう。

Seecret Shop VR快適度 0%

リアルタイムの光源処理が重いのか、全編で45フレームを維持できない状態だった。周囲のオブジェの動きもフレームスキップが発生しており違和感が大きい。時折コンポジターが見えるケースも多く、まともにVR体験できない。VR酔いが激しく、最後までプレイするのを諦めざる負えなかった。

軽量Steam VRゲームソフト

比較的軽量なSteam VRのゲームソフトを見ていく。VRレディのRX480は勿論90FPS維持できるが、VRレディ以下でもプレイ可能な事が期待できるゲーム郡だ。

GUNJACK VR快適度 60%

スマホVRからの移植という事もあって軽量なガンジャック。メニューと冒頭の発射シーケンスは処理落ちが激しいが、ゲーム中は殆ど90フレームを維持出来ている。

エフェクトが重なる場面で11msを越えるが疑似90フレームでカバーできる範囲に収まっており、殆ど気づかない。GT1030は問題なくプレイできるといって良いパフォーマンスを発揮している。

SoundBox VR快適度 60%

Steam VR定番のリズムゲーム。エフェクトが大量に重なる瞬間はドロップするが、画面がエフェクトで賑やかで気づきにくい。全体として疑似90フレームのカバー範囲に収まっており、問題なくプレイ出来た。2,3曲完走してもVR酔いや違和感は感じない。

SoundBoxならSSを0.8にすればGT1030でも遊べそうだ。

重量級(*)Stam VRゲーム

最後にグラフィックがリッチなVRゲームを試す。重量級としているが、Batmanなどはグラフィッククオリティが高いわりには負荷は高くない。グラフィックオプションが豊富で、その辺のチープなグラフィックのインディゲームと比較すると、圧倒的に軽量という事を補足しておく。

・関連記事

http://indiegame-japan.com/2017/04/26/post-2649/

The Blu VR快適度 15%

序盤のシーケンスでは方向によっては何とか45フレーム固定で推移するが、ピンククラゲが大量発生するシーンから瓦解している。GT1030ではThe Bluは少し厳しそうだ。

尚、クジラのコンテンツであれば45フレーム固定で遊べる。一部プレイ可能という事でVR快適度は15%とした。

Batman Arkham VR VR快適度 30%

「Fixed Foveated Rendering」や「Multi Res Shading」が駆使されており、リッチグラフィックの割には軽量なバットマンVR。画質オプションは最も低い設定だが基本的に45フレームで安定してプレイできる。

軽いシーンでは90フレームも狙えそうで、やはりVRは最適化が重要な事が分かるタイトルだ。

VRゲームのビデオメモリ使用量

以下は4GBのRX550でSteam VR上のゲームを動作させていた時のビデオメモリ消費量の推移。各タイトルの細かい内訳は近日の記事で言及するが、想定以上にビデオメモリの消費が大きい様に思える。

VRAMがあれば利用する挙動なだけなのかもしれないが、GT1030の2GBというVRAM容量がボトルネックとなっている可能性は否定できない。

各タイトルの消費量とパフォーマンスの低下幅にも納得感がある結果となっているため、VRレディのGTX1060の3GBは留意が必要なのかもしれない。

快適ではないが不可能ではないGT1030によるVR

ローエンドGPUのGT1030だが、軽量なVRタイトルであれば設定を変更する事で、90フレーム付近で遊ぶ事ができた。また快適とは言い難いが、標準的なVRタイトルは45フレーム固定で何とか動作させる事は出来ている。

「ProjectCars」など殆どの人が45フレーム固定で気づかずに遊んでいた事を踏まえると、GT1030でブラインドテストすると案外気づかない人も居るかもしれない。

特にVR未体験の場合は「こんなものだろう」と普通に満足する可能性もありそうだ。GT1030とhtc VIVEによるVR体験は、AndroidやiPhoneで氾濫しているスマホVRより遥かにリッチな体験になっている。

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現世代ではローエンドはまだまだVRをプレイするにはパフォーマンスが不足している。しかしGPUの進化は早い。Volota世代となる次世代GPUで「Geforce GT2030」の様なグラフィックボードが出たら普通に「SteamVRレディ」になってしまうのかもしれない。

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